【Presents】














「さぁて……サスケもサクラも帰ったしねぇ~。ナ~~ルト、やっと二人になったことだし……」





そう言って、先生は背中から俺を抱きしめてきたってばよ……

いつもといえば、いつもだけど、今日はちょっと違ってた気がする。


「何だってばよカカシせんせ……、俺ってば忙しいの!家帰って巻物読むって決めてるんだって!!」


あんまりギュウギュウと抱きしめてくる先生と、顔が見えないこともイライラに拍車をかけた。

俺ってば腕を捻る様に、肩を回すようにして、胸までしっかり回してくるカカシ先生の腕を振り解こうとしたってば。


「そんな愛想の無いこと言うもんじゃあな~いよ」

「先生ってば、やっぱりノーテンキだってばよ……俺強くなんのに必死なの!今日だってサスケにドべ扱いされたってば……俺ってばがんばんのーっ!」


すっげ必死に言って、ジタバタしてんのに、相変わらず先生は強い力で俺を抱きしめる。

いつもなら、先生の腕も胸も暖かくて気持ちよくて、嬉しいとか思っちまうんだけど……

流石に今日サスケに馬鹿にされたのが、腹立たしくて……家でも外でも修行頑張るって決めてんだってば。

先生頼むから邪魔しないでほしい。


「ねぇ、ナ~ルト。もうすぐナルト誕生日でしょう?」


カカシ先生が、抱きしめる腕の力をそのままで、尖った顎を俺の肩口に乗せてきた。

そして優しい声で、そう聞いてくるから………

俺は、逃げようともがいてたのに、カチンと固まってしまう。

そう。もうすぐ誕生日。

でもそれは、誰もが嘆き悲しむ、里が追悼に重く暗く沈む日だ。

生まれてこのかた、おめでとうなんて心から言ってもらえたかどうか……。

三代目のじーちゃんとイルカ先生くらいかな……。

心から言って貰えた気がしたの………。

でも、じーちゃんは火影だから、その日は俺の相手どころじゃない。

里の長としての仕事も、行事も山のようにあって。俺どころじゃあないし…。

イルカ先生にとっても両親を失った命日で………他人のことを祝うどころじゃあ無いと思うってば。

いつも、俺………どっちからも逃げてたなぁ………。

忌むことは出来ても、とてもじゃないが、ハッピーな気持ちになんてなれない。

なのに…先生は、わざわざ聞いてくるの?


「何、言うってば…よ…」


思わず顔が強張り、下を向いてしまう。


「ん~~、何か欲しい物無いかなぁって…思って。ほら、言ってるでしょ?先生はナルトが好きなの。ナルトも先生のこと好きって言ってくれたでしょ?先生…大好きなナルトの為にお祝いしてあげたいんだよ~」


いつもの間延びした言い方……。だけど、何だかとっても優しくて。胸がぎゅうぎゅう音を立てて締められてるみたいで……苦しい。

俯いてしまった顔…。涙がそのまま引力に負けて、ポタポタと落ちてしまいそう。

腕で拭いたいのに、まだ先生の両腕の拘束が続いているから、拭き取ることも出来やしない。

だから、ほら………。ポタポタと涙の粒が……とうとう……とうとう引力に負けちまった。

俺の前側に回したカカシ先生の腕に、一つ二つと吸い込まれるみたいに落ちてく。

先生……いつも腕まくりしてるし……。腕まくりせず、普通に長袖を着こんでれば、その布地がこんな涙くらい吸い込んでくれるのに……。

先生の腕……汚さないのに……


「何で泣くのよ……ナルト」


先生は、尋ねるというより……ただ静かに呟いてる感じだった。


「な、……い、て……ねぇって、ば………腕……は、なし……て、くれ…てば……」


必死に言いたい事を言えば、しゃくりあげた様になって、恥ずかしい。情けない。

そんなくしゃくしゃの顔を、カカシ先生に見られてないのが唯一の救いだったのに…。


「何か欲しい物ないの?…ね?」


そう言って、先生はとうとう俺を拘束していた腕を解くと、今度は腕を掴みくるりと反転させてしまった。
さすがの動きで逃げる間もない……。

顔を真下に向けておかないと、涙でぐしゃぐしゃの顔見られちまうし……。


「!!!」


でもそんな心配を余所に、今度は正面から抱きしめられて、ぎゅっと抱きしめられると自然と顔は上を向く。


「泣き顔見られたくないんだよね~。見やしな~いよ」


また優しい声音で、気遣いの言葉が降ってくる。

そしてポンポンと背を叩く、宥める腕……。

ブワ……とまた、涙が溢れた。


「ねぇ、何かプレゼントさせて欲しいんだよ俺……。もう、いつもいつも幸せな気持ち、ナルトに貰ってるから、ナルトが喜ぶことしたいし、プレゼントも贈りたいんだよね……」


そんな言葉の一つ一つが、かけがえのないプレゼントなのに……先生は気付いてるんだろうか……


「俺………もう、なんもいらないってばよ?」

「でも、……何かあるでしょう?あ、何も物だけじゃあないからさ。何か欲しいの言って?」


あんまり優しく、甘やかすように先生が聞いてくるから……

本当は言うつもりなんか無かったのに。

心の中でいつも思ってても、絶対に言うつもりもなかったことが………

知らないうちに、言葉になって喋ってた…。


「家族が………欲しいってばよ」


そしたら先生、初めて抱きしめてた身体をガバリと離して……俺を片目でギョッとしたように見つめてきたってば……。

何か驚いてたみたい……

悪いこといったかな……

そりゃあ、先生でも無理なことあるってばよ……


「じょ。冗談だってば……!」


半べその顔で、元気な声を心がけて、それがいっぱいいっぱいだったけど、やっと言えたってば。

ぶんぶんと眼の前で大げさに手を振って見せたら……

先生がものすごく真面目な顔をして、俺の前で正座した……。


あれ?



何で?



どういうこと?




「ごめんナルト。それはちょっと、今年の誕生日は無理………でもねっ!!…必ず数年後にはプレゼント出来るから、もう少し待ってて!本当に本当だから、約束するから!!」


「ちょ……ちょ……ちょっと、せんせ……冗談だってば、無理に決まってんじゃん!せんせ、どうしたってば……うわ、土下座って…!!止めろって!!」


先生は俺が止めるのも聞かず、その後も”ごめん””もう少し待って””必ずプレゼントします”って暫く土下座を続けた。

あんまりな姿だから、俺も”うん、持ってるってば”と半ば、止めさせることに必死で先生に言ったんだってば………。

その後は、すごく恐縮してしまってる先生を宥める気持ちもあって、本当の、誕生日のお願いをしてみた。


「誕生日の夜には、カカシ先生…一緒に居て欲しいってば………あと、一緒にケーキも食べて欲しい」


先生はやっと笑顔に戻って、いつものように嬉しそうに……。


「りょーかいっ!」


って言ってくれたってばよ。













―――その後












約束通り、本当に幸せな誕生日を先生と過ごす事が出来て―――



俺はあの時先生とした、もう一つの約束をすっかり失念してしまった―――



忘れてしまったんだよなぁ―――








































by 千之介

happy birthday! ナルト君。あなたが幸福だと私は嬉しい☆

カカナル二部に続く予定。



拙い文ではございますが、楽しんで頂けたなら幸いです。
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