コミックス28巻♯245ナルトの帰郷!より。もう待って待って待ちきれないカカシ先生がとうとう我慢できなくなるという…カカナル。
ほら、大人なんだし、いいよね。みたいな(笑)















その蒼き蒼き蒼天に

昇る梯子は見当たりもせず

ただ己が腕(かいな)を伸ばして

この手を大きく開いてみては

白き雲を一千切りでも…と。

願えども願えども

行うは難く。

せめていつまでも眺めていようと

眼(まなこ)を閉じるをよしとせず

いつしかは、その熱き眩しさに

この双の瞳は焼き爛れ

憧れやまぬ空の色をも

映すことを叶わずとする。








嗚呼、どうか一度(ひとたび)でも、その蒼の中に身を埋める(うずめる)ことが出来たならば
それこそが、極楽の浮遊の幸を思うことが出来るものを……

















□蒼天追捕 【so-tentsuibu】












美しい空だ。だがひどく高くて、とても遠い。
なめらかな水色を器から全て零して拡げたような、透明な青が頭上一面を覆う。
ところどころにぽかりと綿飴雲が浮かんで、木陰の上に更なる影を落とす。


「いい天気だな。爽やかな空の色だ…。眩しいくらいだねぇ」


カカシは火影の執務室に向かう途中の一時、手の庇で陽差しを防ぐようにして晴天の空を見上げて呟いた。
この男は、こんな透き通るような午前中の空を目にするたびに、いつも一人を思いだす。



―――ああ、ナルト。今どこに居るの…?お前に、とてもとても会いたいよ―――。


















「お呼びにより参上しました」


火影の執務室では、いつものように綱手が顎下で手を組み、机に肘をつく姿勢でカカシを出迎えた。


「御苦労。外はいい天気だろう?こんな日は外でゴロンと横にでもなりたいねぇ」

「はぁ」

気のない返事を返すカカシに対し、綱手は何やらご機嫌な様子だ。
表情は明るく、頬にのった笑みは絶えない。
ゆったりと組んだ手に乗せられた顎も、いつもなら気だるげであるのに、今日はうっとりとまどろんだ感もある。

「何か良いことでもおありになりましたか?綱手様」

「フフフ…そうだねぇ」

そう言って、チロリとカカシに飛ばす視線ですらどこか艶めかしくも感じる。
とにかく、何か含んだ感じがするな、と。カカシは少し身構えた。
こういう時の女傑は、いつもおかしなことを言い出すことが多い。
面倒事を他人に割り振る時などが良い例だ。カカシとて、何度その餌食になったか数は知れない。

―――まぁ、詳しく聞き出すよりは受け流す方が無難だな。

と思えば、綱手の良い事を今聞き出すよりも、本来の呼び出しの趣旨が先決だと切り替える。
カカシは至極真面目顔で、組んだ腕を後ろ腰にまわし、気をつけの姿勢をとったまま、綱手の次の言葉を催促することにした。

「ところで、急の呼び出しの内容は?」

「フフフ…」

当然の質問にすら、含んだ笑みで返され、カカシはさっぱり???な状態だ。

―――なんなんだ、いったい。

綱手のおかしな雰囲気に、カカシがあからさまに眉根を寄せれば、ようやく綱手もそれまでの笑みで細めていた目をキョロリと見開き、本来ドングリの如く大きめの眼の片方をパチリと閉じて、カカシに一つウィンクを送った。
 
「へ……?」

カカシが素っ頓狂な声を出すと、もうたまらないとばかりに思い切りよく吹き出し、綱手は派手に笑い出す。

「アーハッハッハッハ!カカシ、そんな変な顔をするんじゃあないよ。今からするのは、間違いなくお前にとってもいい話さ」

カカシをおいてけぼりにして、ケラケラと豪快に笑う女傑は、側につくシズネに『やりすぎです』と窘められる。
注意するシズネに小声で、『いや、カカシの表情がおかしくってな』などとまだ軽口を返し、綱手は爽快な笑顔でカカシに向き直った。


「カカシ喜べ!今日ナルト達が里に帰ってくるぞ!」

「………え」


カカシが急に真顔に戻る中、その様すら綱手は楽しみつつ、ご機嫌な様子で尚も続けた。

「朝一番に自来也からの伝書が届いてな。今日の昼頃には二人揃って帰ってくるらしい。お前もナルトに会うのは久しぶりだろうから、夕刻より入っていた任務を振り替えておいた。本日は任務無しだよ。それを伝えるために呼んだのさ。特別の配慮だから、有難く思いな」

どうりで綱手の機嫌がいいはずだった。
お気に入りのナルトに再会するのは、綱手といえど、久方ぶり。いや、カカシと同じく二年半の歳月を我慢していたはずだ。
それゆえに、孫のように子供のように、はたまた今は亡き弟の代りのようにナルトを可愛がっている綱手としては、今回の再会が楽しみでならないはず。日夜火影の仕事をこなすのも、ほとんどナルトのため的なところもある。まして自来也との修行の旅を終えてやっと里に帰ってくるナルトが、どれほど成長したかと想像をすれば、尚、胸は早鐘のように高鳴るはずだ。容易に想像のつくことだと、綱手を良く知るカカシとしては、先ほどまでの火影のおかしな言動全てに理解が出来た。


―――それであのハイテンションか…。


大きく納得だ。とシズネに目配せすると、シズネが小さく苦笑しながら一言だけ漏らした。

「朝からずっとこの調子なんです」






















「火影様、早朝より申し訳ございません。自来也様より至急の伝書が届きましたので、お目をお通しくださいませ」


シズネがまだ登庁もしていない時刻であったこともあり、宿直の火影側近が綱手の寝所前で声をかけた。
常であれば、なかなか寝汚い五代目火影の綱手であり、シズネも側近も往生させられることしばしばであったが、今朝は何を思ったか、静かな側近の声にも即時に反応する。大き目のベッドである寝所から、身も軽やかに抜け出すと、薄手の夜着に羽織を一枚肩から羽織り、つかつかと装着し終えたヒールをフロアーに打ち付けながら、側近の控えるドア口へと歩み寄った。

「大義」


そう一声だけかけると、側近は音もなくドアを開け、書面だけを恭しく火影に差し出す。まるで、しどけない火影の姿を見ることは禁忌であるかのように。
とびきりふくよかなサイズの綱手の胸は、常と同じくいや、それ以上に夜着からはみ出していたが、綱手自身は気にも留めていないようで、入ってくればよいものを、と側近に一言付け加えて両手に収まる小さな紙を手に取った。
双眼を走らせ、踊った字ずらに破顔する。


「……とうとう、帰ってくるか」


短いが、思いの丈が篭った科白を一つ吐き、この里の長、綱手という女傑は開けた眼を輝かせた。
窓側を見やれば、左右に開かれたカーテンより朝の鮮烈な暁光が伺える。
部屋一面の大きな窓に歩み寄り、カラと音を立て窓を開く。澄み切った外気が部屋中を満たし、綱手に深呼吸を促した。
思いきったように息を吐き、吸い込めば、綱手の胸も澄んだ空気で満たされる。

―――長かったのか、短かかったのか。

この二年以上の年月に思いを馳せた。
里の多くが待っていた帰郷に違いない。だが、この女傑には殊更思いの深いナルトの帰還であった。
同行して帰ってくる自来也をも思う。
もう、互いによく歳をとった。あの長い旅癖も、ここらへんで少し落ち着いて、里に居ついてくれればよいものを、と。
そしてナルトの成長を想像する。大人と違い、子供の成長は目覚ましいものだ。里の同年代の若者達の変わりようを思い出せば、ナルトの変化も随分と楽に想像できる。公ではないにしろ、あの四代目の忘れ形見だ。男の子であるから、随分と身長も伸びたことであろう。それに合わせたように手足もすらりとし、ふっくらとした頬は少し脂肪が落ちて、幾分かシャープなラインが出たはずだ。小さかった手も、少し節立ち大きくなったことだろう。女の子のように少し高めの声は、声変わりをして野太くなっているかもしれない。いや、それともすぐに大声で喚くナルトのことであるから、掠れてハスキーな感じだろうか。勿論ただの想像であるのに、頭の中のナルトが今にもばっちゃ~ん!と叫んで目の前に飛び出してきそうだ。綱手はククッと小さく笑った。そして、ふとあることに気付く。

「ああ、そうだ。もう一人、ナルトが帰ってくるのを首を長くして待っている大人がいたっけね~」

そう独りごちると、机上に置いた、予備の火影書類。本日の日程表、任務分配帳を手に取る。
一、二ページをペラペラと捲り。ああ、やっぱりだ。と小さく呟く。尖った形良い顎に手をやり顎先を指で摘むこと数回。しばらく逡巡すると、綱手は早速側仕えの男に声をかけた。

「至急要件だ!本日の任務予定を再構築する。手の空く暗部を数人呼べ!」

綱手が机上に放り投げた日程帳の開けられた頁には、『上忍:はたけカカシ』の名がしっかりと刻まれていた。





















光差し込む窓を覗けば、ピーッ!と一声鳥が鳴く。五代目火影の呼び出しだ。
本日の任務は夕刻からであるに、こんな午前のまどろみの時刻に呼び出しとはまた一体どういうことだ。と、カカシは常より眠たげな眼を、更に眠たげに歪ませて空を見上げる。

―――何かあったかね~

フラフラとベッドから起きだすと手早く身支度を整えにかかる。昨夜も遅くまでの任務であった。ここのところはそんな任務ばかりだ。陽が沈む頃に出発し、陽が昇る頃、明け方や昼前に解散という任務が多かった。昼夜逆転もいいところだが、カカシにとっては数時間も眠れば十分体力回復は適うので、長期の任務や暗部の殺戮に比べれば随分と楽な任務ばかりだ。故に、今朝も数時間睡眠をとってしまえば自然と目が覚めるものだから、カカシは寝所内でいつもの愛読書なんぞを取り出し、まったりとした時間を過ごしていた。


「さて、行きますか」


忍服を身につけ、額当てをキリリと結び口布を引き上げると、そこにはもう上忍の空気を纏ったカカシがいた。
スイ…と、先ほどまで読んでいたイチャイチャシリーズの一冊を忍具ポーチに忍ばせる。
いつも通りの長い一日が始まるね…。カカシはその時はまだそう思っていた。
里にナルトがいない。そんな平坦な毎日を、カカシは受け入れる生活を続けていた。ただ、ただ、ナルトを待ちながら。
最早、消耗することも忘れるほど、カカシにとって長い時間が流れていたのだ。









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by 千之介

出来るだけ原作よりで、カカシ先生とナルトの初Hを!と意気込んでみたものの…
激しく空回りです。
なかなか二人きりになってくれないし……。
力尽きてしまいそう~~~(@▼@;
は~う~


拙い文ではございますが、楽しんで頂けたなら幸いです。
ご感想・励まし等頂けますと、管理人は飛び上るほど喜びます!




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