#455繋がり…!から テントの中での会話を放っておくにはあまりになんか萌え過ぎて…(笑)
四代目と会って話したことをカカシに告げた笑激のシーンを自分の腐れ脳はこう解釈してしまいました(滝汗)
『Papa Don't Preach 』
「四代目に会ったんだ」
唐突に発せられたナルトの一言に、カカシは眩暈を伴うような衝撃を受けた。
『オレってば雷影に会ってくる!!』この一言だけでも、カカシとヤマトにとって衝撃的発言であったというのに、その次には…
―――四代目に会っただって!?いったいどういうこと?…何を言ってるのナルト?
上忍二人が驚愕している中、ナルトの手当てをしているサイは不思議そうな顔をしていたが、いつも冷静なヤマトとカカシは驚きを隠せずにいた。
話を続けるナルトから、よくよくその内容を聞いてみると、どうやら本当に会って会話をしていたらしい。
カカシも薄々感づいていた16年前の九尾事件の黒幕の存在から、果てはつい先日里を襲ったペインの話までと内容は幅広い。
更に、暁の面の男の風体まで、こと細かく説明されていることには驚きを禁じ得ない。
勿論、今生では四代目は既に絶命している。ところが不思議な術を幾つも扱うことに長けていた若き天才四代目は、我が子ナルトに屍鬼封尽を施した際、術式の中に己の精神エネルギーを閉じ込める形で、今まで精神面ではナルトの中で存在してきたというのだ。
自身が先日、死の淵で出会った父サクモとの対話とは大きく意味が違う。カカシの父、はたけサクモの時計の針は、命を絶ったその時のまま、過去の想いともども凍ったようにそこに留まったままであったから。
不意に与えられた逢瀬で、確かにカカシはこれまで胸にとどめ置いた想いを伝え、父を縛っていた心の回顧よりサクモを解放できたのだ感じていたのだが…。
―――オレの場合と、明らかに何か違うよね……っていうか……ソレって……ナルトの中から外を見てたってこと…!?……えーーーーーーーーーっっ!!
心の中で自分に都合の悪い回答を導き出せば、もういてもたってもいられない。
とにかく、いつもの冷静沈着を総動員して、今自分は、何をすべきかを考える。
カカシはまずサイを追い払うことにした。
根の頭、ダンゾウの命であることは察してはいるが、最近のサイはナルトの側から離れようとしない。
カカシにとっては、ナルトと色々話す上で非常に邪魔な存在になっていた。
サイに、このたび就任する火影ことダンゾウへ、16年前の九尾襲来黒幕は、うちはマダラであるという重大情報を伝えに遣ることにする。現状ではまだ、うちはマダラであるというのは可能性に過ぎないが、九尾の口寄せを行うなど、人間離れしたうちは一族のリーダーマダラであれば、十分納得のいく見解だ。
連絡係をサイに選んだのは、傍から見ても最良の判断に思われた。カカシの内心はどうであれ…。
―――ま、これでサイを追い払ったら、後でゆっくりナルトに聞くとしましょうか。
そう考えながら、最後に一つナルトに尋ねる。そう、つい先日の自分の体験に重ね合わせて…。カカシにとって当然の好奇心であった。
「ナルト!四代目はお前に何て言った?」
「え?」
ナルトにはカカシの真意が明確に伝わってはいないようだった。
カカシはそんなナルトに促すように続けた。
「父親ってのは息子に色々言いたがるもんだろ」
「!!」
十分、含んだつもりだった。第一、カカシは今の今まで四代目をナルトの父親として大っぴらに表現などしたことはない。
勿論里の誰もがだ。あの、三代目も、自来也様であってもその事実を口に上らせたことなどないはずだ。
これはカカシにとって、ナルトに鎌をかけた言葉である。
その返答次第では、是非とも確認しないといけないことがあるからだ。
「オレを信じるって――……言ってくれた!!」
ナルトは素晴らしい笑顔で明快に答えた。
もう、疑いようがなかった。今回の封印式での逢瀬で、すっかり親子の名乗りまで済ませてしまっているようだ。
しかし、信じるの一言だけでは、カカシの疑問を晴らすような回答とはいえない。
何より確認したいことがある。
大変に気になることがある。
かなり心配なことがあるのだ。
物心ついた我が子との初対面だ。話したいことは山のようにあるはずだった。
しかも、年頃の子どもを持つ親として心配事はどの親も共通。同じ悩みを持っているものだ。
こんなにかわいらしく、かつ美しく、逞しく、精神健全に育った息子に、聞きたいこと。確認したいことが必ずあるはずだ。
カカシは止めどなく湧き出る焦りを、隣りのヤマトに気付かれないようにと、ナルトにこれまた綺麗に笑顔を作って返し、親指をシュビリと立てて見せるのだった。
「よしっ!」
―――さぁ、この場を解散したら即ナルトに確認だ…。
□
「ねぇ、ナルト。ちょ~~っといいかな?」
テントを後にしようとするナルトを呼びとめる。
ナルトは何だってば?といつものように振り返る。その表情には含んだものは何もない。
サイは早速ダンゾウへの報告に向かったし、雷影直談判への同行に、嫌を言わせず連れていくことを了承させたヤマトにいたっては、出立前に済ませてしまう作業があるからと、慌てて里の復興現場へと向かった。
人混みから外れた場所に設置された医療用の予備テントには、いつの間にかナルトとカカシの両名のみとなる。
カカシはこの瞬間を狙っていた。雷影の元へと出発してからでは、常にヤマトも同行するのでチャンスは今しかない。
今のうちにナルトに聞いておきたいことがあった。二人きりで……。
「雷影様への直談判出発まで、まだ少しあるでしょ……ちょっとナルトに確認したいことがあるんだけど……」
あのさ……と。
いつものように頭に手をやりながら、七班時代から続く遅刻時のように、ハハハとバツの悪そうな笑顔を見せれば、意外なことにナルトの方から先に口を開いた。
「わかってるってば、さっきは皆が居るから言い出しにくかったけど……」
「え……」
ぎょっと見えている方の目を見開けば、ナルトに立ったまま話すのも何だからと座ることを要求される。
―――なんだか…マズイ気がする…
カカシは反論することもなくおとなしくナルトの指示に従いその場に腰を下ろす。いつもなら軽口を叩けるのに、言葉が思うように口をついて出ない。
唾が引っ込み、喉が異様に渇く。なんだこの緊張感は…と、カカシは手っ甲の布地で、ツツ…とこめかみに落ちる冷や汗をぬぐっていた。
そんなカカシの様子を見て、ナルトがほぅ…と小さく溜息をつき、カカシが言い出したかったことを、まるで先回りするかのように話し出した。
「カカシ先生が確認したいことってさ……。父ちゃんのことだろ?」
「!!」
ギクリ…上忍になって、しばらく感じなかった悪寒がカカシの背中を走った。ナルトは大きく胡坐をかいて座っているが、カカシは緊張感から正座をしたくなる心境だった。何とか胡坐のまま、居住まいを正すに留め、ナルトの包帯だらけの顔に見入る。
ナルトは仕方ないなぁというような顔をしていた。そして、いつもより大人びた表情をしているように思えた。
「父ちゃんが何を言ったか、詳しく知りたいんだよな…先生は。でも俺も、知っておいた方がいいと思うってば、先生には正直に伝えておこうと思う。いつ言おうかってちょっと考えてたけど、今はいい機会だと思うし…これから、サスケのこととかあるし、落ち着いて話せないかもしんないしな…」
―――で、何を話したんだ四代目…いや、先生は…!?
少し試案顔になったナルト。眉を潜めたり、少し視線を左右に飛ばしたり…言葉を選らんでいるのか、カカシに話すことを躊躇っているのか。
その様子にすら、カカシは益々全身が硬くなる思いだ。
だが、カカシの緊張を余所に、ナルトは胡坐の膝に両手をしっかりついた姿勢で、軽く眼を閉じ落ち着いて言葉をつづけた。
「先生が緊張してんのも…分かるってば…………。先生の想像どおりだってば………父ちゃん……俺達のこと全部知ってる………」
―――ゲッ!!!
ナルトの言葉の後、二人に束の間沈黙が下りた。
「うっそ……」
ほとんど無意識の内に、心の声がカカシの薄く開いた唇。その隙間をするりと抜け出る。
言葉とは正反対にナルトの言っていることこそが真実だということは、頭の中で理解はしているのに、それを認めることこそが苦しい。いや、恐ろしい。
その先を聞くことにも、全神経を傾けなければ、今にも胡坐をかいた状態のまま後方へ卒倒してしまいそうだ。
「カカシ先生……顔色悪いけど、このまま話続けていいってば…?」
ナルトがそんないっぱいいっぱいの態であるカカシに、気遣いを見せるが、もうカカシはグロッキー寸前。
全部知ってるっていうのは…疑いようなく二人の特別な関係のことであろう。
カカシは顔の色を徐々に無くしながら、声を震わせつつ、必死の思いで聞き返す。それがやっとであった。
「そ…それって………聞くこと…も…憚られるけ…ど…さ、…あの、…俺が…ナ…ルト…抱いちゃってる……の…とか…全…部……?」
「そう。全部。」
―――ヒィッーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!
ナルトにきっぱり言い切られると、もう涙がちょちょけ出そうなカカシである。今度は蒼白から、真っ赤に顔色をかえて、更にあたふたしている。
「あんさ、父ちゃん必要なこと話し終わって、そろそろタイムアップって時。涙の対面果たしたばかのり息子に、急に質問してきたんだ。もう、身体が透けて消えてしまうって時だってーのにさ。」
「…………」
「カカシ先生のこと好きかって…本気に愛してるのか…ってさ。これだけ確認しないことには、逝くに逝けないって…。こんな非常事態時に何を言い出すんだろうと思ったけど……父ちゃん真剣な顔して聞いてくるから……俺……恥ずかしかったけど、大きく頷いて答えたんだ。父ちゃんには本当の事言わなきゃって思ってさ。そしたら父ちゃん、おっきな溜息吐いて……必ずカカシ先生に伝えておくようにって、そのまま消えるまでマシンガンみたいにまくし立てたってば」
ここはカカシが喜ぶべきところだった。間違いなく。何しろナルトが父親に、カカシを愛していると宣言してくれているのだ。
だがもう、頭の中が白んできてよく分からない。陸に打ち上げられ、あっぷあっぷと、息ができずに苦しんでいる魚を連想できる状態だった。
「ま、伝えるようにって言われたから、ショックでかいだろうけど、ちゃんと聞いてくれってば……まぁ、こんな感じだったかな…
『カカシの趣味がこうも特殊なものだとは思わなかったよ、ナルトの気持ちを尊重するつもりだから、まぁ許すけど、ナルトに手を出したからには最後まできっちり責任はとるように。ああ、これで由緒正しい我が家の家系も途絶えるわけだが、それはそれ、忍なんてのは厳しい世界だから早世するなんて珍しくないことだし、気にしなくてもいい。ただ、ナルトを泣かすようなことをしたら絶対に化けて出て、二人の仲を使える手を全て使って裂いてやるからね。よく肝に銘じておくように。それからナルトに熱心に修行をつけてくれるのは有難いけど、房中術ばかりに特質しなくていいから、普通の修行をつけてやってね。ナルトの身体に九尾がいるからって、ダメージはダメージだから、無理はさせないように。特に夜のことを言ってるんだよ。君の嗜好に付き合わされるとナルトの身体がもたないからね。まだ、言いたい事はたくさんあるけど、そろそろこの身体も消えるからこんなもんで許してあげるよカカシ君。』
……ってな事を言ってたんだけど……ああ、やっぱショックだってば?…先生…口から変な気体が出てるってばよ……。でも最後にこれだけは聞いて欲しいんだ。……父ちゃん消えちまう直前、ふっと優しい顔に戻って……信じるって。お前が選んだ相手なら、全てひっくるめて信じるよって。言ってくれたんだ。父ちゃん認めてくれたみたい…って先生?先生っ?カカシ先生っ??」
放心状態のまま、固まってしまったカカシにナルトは慌てて近寄ると肩をガシリと掴んで揺さぶった。
カカシは意識を失う直前だったようで、揺さぶられたことで、ハッと我に返る。
肩に乗せられたナルトの手を片手で掴み、ゆっくりと正気戻しつつある目を碧眼に合わせた。
「ナ…ナルト…」
「先生大丈夫か?ちゃんと話聞いてたってば?」
「しょ…正直、聞いてるうちに意識が飛んでしまうかと思ったよ…ハハハ…」
引きつった笑顔をナルトに見せても、ナルトの手を掴んだままのカカシの手指は明らかに細かく震えていた。
そんなカカシを見たことがないナルトは、とても心配そうに身を寄せる。
「ショックだってば…?」
「いや、なんだかもう、頭が混乱しちゃって……こんなにはっきり先生に見られてたなんて、ね。ナルトにあんなことしようとか、こんなことしようって悩んでるとこなんかもお見通しだったわけだ…。勿論、あんなことしたり、こんなことしたりっていうのも見られてて……ハァ~、あの世でどんな顔して会ったらいいんだよ。……でも……」
「でも…?」
ナルトは口調が戻ってきたカカシに、幾分安心したように頬の緊張を解き、カカシに掴まれた手を解くことなくカカシの横手に座り込む。
そしてそっと寄り添うようにして、カカシの横顔を覗き込んだ。眼差しで言葉の続きを催促する。
「ナルトと別れるようにっていう伝言でなくて良かった…。」
言葉の後、ぎゅうっとナルトの手を握り締める。その手にはとても力が籠っていた。ナルトが微かな痛みを感じるほど。
「せんせ…最後まで聞いてた?父ちゃん…信じるって、信じてるって最後に言ってくれたってばよ……」
「うん」
「認めてくれたってば…」
「うん、うん」
カカシの表情を見るようにして覗き込んで話しかけるナルトの顔を、カカシはもう見ることが出来なかった。
ナルトの視線から逃れるように顔を伏せてしまう。
ナルトが執拗に覗き込むので、最後には見ないで…と空いた手でナルトの顔を、視線を遮る為に覆う。
「せんせ…ひょっとして泣いてるってば…?」
カカシは答える代りに、再度ナルトの手をキツク握るのだった。
―――四代目、いや……先生……
―――伝言しかと承りました。ナルトを泣かせたりはいたしません。
「せんせ…?」
「これは約束のキスだから…」
キツク握り締めていたナルトの手をついと引く。
そして少し驚くナルトの唇に、そっと寄せるだけの軽やかなキスを落とした。
by 千之介
あの親子対面感激のシーンで、自分の腐れ脳はこんなことを考えてしまいました。
Papa Don't Preach はマドンナの人気曲から。
これしか思いつかなかった…(年齢がバレますな;)
でもカカシ先生は別の意味でナルトを啼かすんだと思います。
拙い文ではございますが、楽しんで頂けたなら幸いです。
ご感想・励まし等頂けますと、管理人は飛び上るほど喜びます!
四代目と会って話したことをカカシに告げた笑激のシーンを自分の腐れ脳はこう解釈してしまいました(滝汗)
『Papa Don't Preach 』
「四代目に会ったんだ」
唐突に発せられたナルトの一言に、カカシは眩暈を伴うような衝撃を受けた。
『オレってば雷影に会ってくる!!』この一言だけでも、カカシとヤマトにとって衝撃的発言であったというのに、その次には…
―――四代目に会っただって!?いったいどういうこと?…何を言ってるのナルト?
上忍二人が驚愕している中、ナルトの手当てをしているサイは不思議そうな顔をしていたが、いつも冷静なヤマトとカカシは驚きを隠せずにいた。
話を続けるナルトから、よくよくその内容を聞いてみると、どうやら本当に会って会話をしていたらしい。
カカシも薄々感づいていた16年前の九尾事件の黒幕の存在から、果てはつい先日里を襲ったペインの話までと内容は幅広い。
更に、暁の面の男の風体まで、こと細かく説明されていることには驚きを禁じ得ない。
勿論、今生では四代目は既に絶命している。ところが不思議な術を幾つも扱うことに長けていた若き天才四代目は、我が子ナルトに屍鬼封尽を施した際、術式の中に己の精神エネルギーを閉じ込める形で、今まで精神面ではナルトの中で存在してきたというのだ。
自身が先日、死の淵で出会った父サクモとの対話とは大きく意味が違う。カカシの父、はたけサクモの時計の針は、命を絶ったその時のまま、過去の想いともども凍ったようにそこに留まったままであったから。
不意に与えられた逢瀬で、確かにカカシはこれまで胸にとどめ置いた想いを伝え、父を縛っていた心の回顧よりサクモを解放できたのだ感じていたのだが…。
―――オレの場合と、明らかに何か違うよね……っていうか……ソレって……ナルトの中から外を見てたってこと…!?……えーーーーーーーーーっっ!!
心の中で自分に都合の悪い回答を導き出せば、もういてもたってもいられない。
とにかく、いつもの冷静沈着を総動員して、今自分は、何をすべきかを考える。
カカシはまずサイを追い払うことにした。
根の頭、ダンゾウの命であることは察してはいるが、最近のサイはナルトの側から離れようとしない。
カカシにとっては、ナルトと色々話す上で非常に邪魔な存在になっていた。
サイに、このたび就任する火影ことダンゾウへ、16年前の九尾襲来黒幕は、うちはマダラであるという重大情報を伝えに遣ることにする。現状ではまだ、うちはマダラであるというのは可能性に過ぎないが、九尾の口寄せを行うなど、人間離れしたうちは一族のリーダーマダラであれば、十分納得のいく見解だ。
連絡係をサイに選んだのは、傍から見ても最良の判断に思われた。カカシの内心はどうであれ…。
―――ま、これでサイを追い払ったら、後でゆっくりナルトに聞くとしましょうか。
そう考えながら、最後に一つナルトに尋ねる。そう、つい先日の自分の体験に重ね合わせて…。カカシにとって当然の好奇心であった。
「ナルト!四代目はお前に何て言った?」
「え?」
ナルトにはカカシの真意が明確に伝わってはいないようだった。
カカシはそんなナルトに促すように続けた。
「父親ってのは息子に色々言いたがるもんだろ」
「!!」
十分、含んだつもりだった。第一、カカシは今の今まで四代目をナルトの父親として大っぴらに表現などしたことはない。
勿論里の誰もがだ。あの、三代目も、自来也様であってもその事実を口に上らせたことなどないはずだ。
これはカカシにとって、ナルトに鎌をかけた言葉である。
その返答次第では、是非とも確認しないといけないことがあるからだ。
「オレを信じるって――……言ってくれた!!」
ナルトは素晴らしい笑顔で明快に答えた。
もう、疑いようがなかった。今回の封印式での逢瀬で、すっかり親子の名乗りまで済ませてしまっているようだ。
しかし、信じるの一言だけでは、カカシの疑問を晴らすような回答とはいえない。
何より確認したいことがある。
大変に気になることがある。
かなり心配なことがあるのだ。
物心ついた我が子との初対面だ。話したいことは山のようにあるはずだった。
しかも、年頃の子どもを持つ親として心配事はどの親も共通。同じ悩みを持っているものだ。
こんなにかわいらしく、かつ美しく、逞しく、精神健全に育った息子に、聞きたいこと。確認したいことが必ずあるはずだ。
カカシは止めどなく湧き出る焦りを、隣りのヤマトに気付かれないようにと、ナルトにこれまた綺麗に笑顔を作って返し、親指をシュビリと立てて見せるのだった。
「よしっ!」
―――さぁ、この場を解散したら即ナルトに確認だ…。
□
「ねぇ、ナルト。ちょ~~っといいかな?」
テントを後にしようとするナルトを呼びとめる。
ナルトは何だってば?といつものように振り返る。その表情には含んだものは何もない。
サイは早速ダンゾウへの報告に向かったし、雷影直談判への同行に、嫌を言わせず連れていくことを了承させたヤマトにいたっては、出立前に済ませてしまう作業があるからと、慌てて里の復興現場へと向かった。
人混みから外れた場所に設置された医療用の予備テントには、いつの間にかナルトとカカシの両名のみとなる。
カカシはこの瞬間を狙っていた。雷影の元へと出発してからでは、常にヤマトも同行するのでチャンスは今しかない。
今のうちにナルトに聞いておきたいことがあった。二人きりで……。
「雷影様への直談判出発まで、まだ少しあるでしょ……ちょっとナルトに確認したいことがあるんだけど……」
あのさ……と。
いつものように頭に手をやりながら、七班時代から続く遅刻時のように、ハハハとバツの悪そうな笑顔を見せれば、意外なことにナルトの方から先に口を開いた。
「わかってるってば、さっきは皆が居るから言い出しにくかったけど……」
「え……」
ぎょっと見えている方の目を見開けば、ナルトに立ったまま話すのも何だからと座ることを要求される。
―――なんだか…マズイ気がする…
カカシは反論することもなくおとなしくナルトの指示に従いその場に腰を下ろす。いつもなら軽口を叩けるのに、言葉が思うように口をついて出ない。
唾が引っ込み、喉が異様に渇く。なんだこの緊張感は…と、カカシは手っ甲の布地で、ツツ…とこめかみに落ちる冷や汗をぬぐっていた。
そんなカカシの様子を見て、ナルトがほぅ…と小さく溜息をつき、カカシが言い出したかったことを、まるで先回りするかのように話し出した。
「カカシ先生が確認したいことってさ……。父ちゃんのことだろ?」
「!!」
ギクリ…上忍になって、しばらく感じなかった悪寒がカカシの背中を走った。ナルトは大きく胡坐をかいて座っているが、カカシは緊張感から正座をしたくなる心境だった。何とか胡坐のまま、居住まいを正すに留め、ナルトの包帯だらけの顔に見入る。
ナルトは仕方ないなぁというような顔をしていた。そして、いつもより大人びた表情をしているように思えた。
「父ちゃんが何を言ったか、詳しく知りたいんだよな…先生は。でも俺も、知っておいた方がいいと思うってば、先生には正直に伝えておこうと思う。いつ言おうかってちょっと考えてたけど、今はいい機会だと思うし…これから、サスケのこととかあるし、落ち着いて話せないかもしんないしな…」
―――で、何を話したんだ四代目…いや、先生は…!?
少し試案顔になったナルト。眉を潜めたり、少し視線を左右に飛ばしたり…言葉を選らんでいるのか、カカシに話すことを躊躇っているのか。
その様子にすら、カカシは益々全身が硬くなる思いだ。
だが、カカシの緊張を余所に、ナルトは胡坐の膝に両手をしっかりついた姿勢で、軽く眼を閉じ落ち着いて言葉をつづけた。
「先生が緊張してんのも…分かるってば…………。先生の想像どおりだってば………父ちゃん……俺達のこと全部知ってる………」
―――ゲッ!!!
ナルトの言葉の後、二人に束の間沈黙が下りた。
「うっそ……」
ほとんど無意識の内に、心の声がカカシの薄く開いた唇。その隙間をするりと抜け出る。
言葉とは正反対にナルトの言っていることこそが真実だということは、頭の中で理解はしているのに、それを認めることこそが苦しい。いや、恐ろしい。
その先を聞くことにも、全神経を傾けなければ、今にも胡坐をかいた状態のまま後方へ卒倒してしまいそうだ。
「カカシ先生……顔色悪いけど、このまま話続けていいってば…?」
ナルトがそんないっぱいいっぱいの態であるカカシに、気遣いを見せるが、もうカカシはグロッキー寸前。
全部知ってるっていうのは…疑いようなく二人の特別な関係のことであろう。
カカシは顔の色を徐々に無くしながら、声を震わせつつ、必死の思いで聞き返す。それがやっとであった。
「そ…それって………聞くこと…も…憚られるけ…ど…さ、…あの、…俺が…ナ…ルト…抱いちゃってる……の…とか…全…部……?」
「そう。全部。」
―――ヒィッーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!
ナルトにきっぱり言い切られると、もう涙がちょちょけ出そうなカカシである。今度は蒼白から、真っ赤に顔色をかえて、更にあたふたしている。
「あんさ、父ちゃん必要なこと話し終わって、そろそろタイムアップって時。涙の対面果たしたばかのり息子に、急に質問してきたんだ。もう、身体が透けて消えてしまうって時だってーのにさ。」
「…………」
「カカシ先生のこと好きかって…本気に愛してるのか…ってさ。これだけ確認しないことには、逝くに逝けないって…。こんな非常事態時に何を言い出すんだろうと思ったけど……父ちゃん真剣な顔して聞いてくるから……俺……恥ずかしかったけど、大きく頷いて答えたんだ。父ちゃんには本当の事言わなきゃって思ってさ。そしたら父ちゃん、おっきな溜息吐いて……必ずカカシ先生に伝えておくようにって、そのまま消えるまでマシンガンみたいにまくし立てたってば」
ここはカカシが喜ぶべきところだった。間違いなく。何しろナルトが父親に、カカシを愛していると宣言してくれているのだ。
だがもう、頭の中が白んできてよく分からない。陸に打ち上げられ、あっぷあっぷと、息ができずに苦しんでいる魚を連想できる状態だった。
「ま、伝えるようにって言われたから、ショックでかいだろうけど、ちゃんと聞いてくれってば……まぁ、こんな感じだったかな…
『カカシの趣味がこうも特殊なものだとは思わなかったよ、ナルトの気持ちを尊重するつもりだから、まぁ許すけど、ナルトに手を出したからには最後まできっちり責任はとるように。ああ、これで由緒正しい我が家の家系も途絶えるわけだが、それはそれ、忍なんてのは厳しい世界だから早世するなんて珍しくないことだし、気にしなくてもいい。ただ、ナルトを泣かすようなことをしたら絶対に化けて出て、二人の仲を使える手を全て使って裂いてやるからね。よく肝に銘じておくように。それからナルトに熱心に修行をつけてくれるのは有難いけど、房中術ばかりに特質しなくていいから、普通の修行をつけてやってね。ナルトの身体に九尾がいるからって、ダメージはダメージだから、無理はさせないように。特に夜のことを言ってるんだよ。君の嗜好に付き合わされるとナルトの身体がもたないからね。まだ、言いたい事はたくさんあるけど、そろそろこの身体も消えるからこんなもんで許してあげるよカカシ君。』
……ってな事を言ってたんだけど……ああ、やっぱショックだってば?…先生…口から変な気体が出てるってばよ……。でも最後にこれだけは聞いて欲しいんだ。……父ちゃん消えちまう直前、ふっと優しい顔に戻って……信じるって。お前が選んだ相手なら、全てひっくるめて信じるよって。言ってくれたんだ。父ちゃん認めてくれたみたい…って先生?先生っ?カカシ先生っ??」
放心状態のまま、固まってしまったカカシにナルトは慌てて近寄ると肩をガシリと掴んで揺さぶった。
カカシは意識を失う直前だったようで、揺さぶられたことで、ハッと我に返る。
肩に乗せられたナルトの手を片手で掴み、ゆっくりと正気戻しつつある目を碧眼に合わせた。
「ナ…ナルト…」
「先生大丈夫か?ちゃんと話聞いてたってば?」
「しょ…正直、聞いてるうちに意識が飛んでしまうかと思ったよ…ハハハ…」
引きつった笑顔をナルトに見せても、ナルトの手を掴んだままのカカシの手指は明らかに細かく震えていた。
そんなカカシを見たことがないナルトは、とても心配そうに身を寄せる。
「ショックだってば…?」
「いや、なんだかもう、頭が混乱しちゃって……こんなにはっきり先生に見られてたなんて、ね。ナルトにあんなことしようとか、こんなことしようって悩んでるとこなんかもお見通しだったわけだ…。勿論、あんなことしたり、こんなことしたりっていうのも見られてて……ハァ~、あの世でどんな顔して会ったらいいんだよ。……でも……」
「でも…?」
ナルトは口調が戻ってきたカカシに、幾分安心したように頬の緊張を解き、カカシに掴まれた手を解くことなくカカシの横手に座り込む。
そしてそっと寄り添うようにして、カカシの横顔を覗き込んだ。眼差しで言葉の続きを催促する。
「ナルトと別れるようにっていう伝言でなくて良かった…。」
言葉の後、ぎゅうっとナルトの手を握り締める。その手にはとても力が籠っていた。ナルトが微かな痛みを感じるほど。
「せんせ…最後まで聞いてた?父ちゃん…信じるって、信じてるって最後に言ってくれたってばよ……」
「うん」
「認めてくれたってば…」
「うん、うん」
カカシの表情を見るようにして覗き込んで話しかけるナルトの顔を、カカシはもう見ることが出来なかった。
ナルトの視線から逃れるように顔を伏せてしまう。
ナルトが執拗に覗き込むので、最後には見ないで…と空いた手でナルトの顔を、視線を遮る為に覆う。
「せんせ…ひょっとして泣いてるってば…?」
カカシは答える代りに、再度ナルトの手をキツク握るのだった。
―――四代目、いや……先生……
―――伝言しかと承りました。ナルトを泣かせたりはいたしません。
「せんせ…?」
「これは約束のキスだから…」
キツク握り締めていたナルトの手をついと引く。
そして少し驚くナルトの唇に、そっと寄せるだけの軽やかなキスを落とした。
by 千之介
あの親子対面感激のシーンで、自分の腐れ脳はこんなことを考えてしまいました。
Papa Don't Preach はマドンナの人気曲から。
これしか思いつかなかった…(年齢がバレますな;)
でもカカシ先生は別の意味でナルトを啼かすんだと思います。
拙い文ではございますが、楽しんで頂けたなら幸いです。
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ぽちり☆
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入力は半角英数のみ。(カカシ×ナルトってことです☆)