#457 より抜粋して妄想・・・。

雷影に直談判するナルトに付き添うカカシとテンゾウ。非常にカカナル萌えした
ので、こんな捏造になってしまいました。
カカシ視点です。



















―――降り落つ雪の白さに、君の真白な想いを見る―――












[MASHIRO]












「今日はお願いがあって来ました。木の葉隠れのうずまきナルトの嘆願です。少しだけでも聞いてあげてください」





ナルトの少し後方で控えるようにして、只者ではない雷影に向き合うナルトをフォローする。
礼節を欠かす事は勿論できない。しかし、この道中を狙っての嘆願こそが、無礼極まりなく、大変不躾なことであるのは、出発前に必死に食い下がってきたヤマトをねじ伏せた時点で十分に理解していた。


だがもう・・・決めていたのだ・・・。
この命が尽きる事を受け入れた時に、その命を繋ぎとめたのがナルトであったことを理解した上で・・・
俺の命はナルトそのものであり、俺はナルトの望みのために生きてゆくことを。
里を守るという上辺の口上をべったりと貼り付けながら、以後里が何よりも必要とするこの子を、俺が命賭して守るということを。






―――俺の中で何より大切なこの存在の為に、俺は忍である前に、一人の男として生きるのだ。






目の前の忍に散々に付けられた痛々しい傷跡を覆う真白の包帯が、俺の写輪眼を隠す額宛のように、ナルトの半眼を覆っていた。しかし、唯一覗く見事な蒼の宝石は、それ一粒に壮大な想いと覚悟を乗せて眼前の大男をキリリと捕らえる。


「サスケを・・・うちはサスケを、始末するのを止めてもらいてーんだ・・・」


物怖じしない、はっきりとした口調で、誰も進言出来ないであろう、誠の言葉をナルトは素直に吐き出した。
目の前の相手が、その無茶苦茶な内容を突拍子もなく言い放つナルトに、半ば呆れた面持ちで見入るしかなくなる。
――が、本来なら無視をしてそのまま行過ぎることをも仮定していたというのに、器の大きな大男の雷影は、まるでこの歳若い忍に諭すかのように口を開いた。

―――勿論、拒絶だ。

本来聞き届けられるはずもない嘆願だから、当たり前のことだった。
だがナルトは必死に言葉を続けていた。
想いと身体がシンクロし、ガバリと土下座をする姿には微塵も打算や計算など見て取れない。
ただただ・・・素直な感情を正直に、不器用にもそのままの想いがナルトを走らせていた。
サイの手当てを受けながら言い出した時点で、ナルト自身でも無理とはわかっていたのであろう。
それでも、動かずにはいられないナルトの胸中を察し、このように無茶な行動を起こしてはみた。
しかしながらこうやって、冷たい雪面に額をめり込ますように土下座をするナルトの姿を見るのは、同行した俺が、責任を持って見届ける必要があるとはいえ、心がズキリと痛んで爆ぜる。
何故ナルトが・・・何故この子がこんなことをしてまで・・・と、爆ぜた折に生まれる感情は、全てもう一人の教え子への憤怒にすり替った。
しかし瞬時。どす黒く渦を巻く怒りを顔色に一つとして出すでなく、胸中の奥深く、感情の押し届かぬ心の闇倉へと仕舞いこむ。
ナルトに一色(ひといろ)として、この怒りを見せるわけにはいかなかった。

「お願いだってばよっ!!もう復讐で殺し合うような事したくねーんだ!!」

雷影へと向けられるナルトの絶叫は、ただサスケの事だけではない。ペインとの戦いで得た己が答え、それと向き合うが故の苦しみがありありと滲んで見える。
ナルトの魂の絶叫が、そこには確かに含まれていた。
涙声で響くこの叫びを、一国を治める雷影はどのような想いで聞いているのか・・・。
気付けば・・・俺は堪らず、言葉を発していた。



「・・・今ここで若い忍が、不器用なりに雲と木の葉・・・互いの里・国を想い頭を下げている。雷影様・・・・・・アナタは五影の一人としてこれをどう捉え、どう思われる?」



五国にその名が轟くこの男は、おそらくは全ての者が納得するであろう至極真っ当な意見を残して、我々から背を向けた。
ナルトは想いの丈を叫んで後、雪面に突っ伏したまま、嗚咽をこぼすのみ。
皆のやり取りを聞いてはいるだろうが、そのどの言葉もナルトの心の琴線に触れるものであったに違いない。
胸を締め付けるような、涙をこらえる嗚咽は、治まることなくまだ俺の耳に届いていた。


今も穢れなき綺麗な涙を、この冷たい雪の大地が吸っているはずだ。

―――早く抱きしめなければ・・・。

雷影の一団が遠ざかってゆくのを横目で捉え、蹲る愛しい存在に俺は手を伸ばした。


「ナルト・・・もういいよ・・・頭を上げろ」


「・・・く・・・っ!!・・・っ!!」


ガツリ、ガツリと。打ち付けられるナルトの拳が、踏みつけられた雪に何度もめり込む。
俺はその手を、そ・・・と、優しくではあるが、揺ぎ無い強さで止めた。
堅く握られた拳には、血の気が抜けたように、雪の冷たさが宿る。
ナルトの熱い想いとは裏腹に、その身体は急激に冷えてゆくかのようだった。



「・・・ッチ!」


珍しく、品行方正エリートのヤマトから舌打ちがもれる。
さすがのヤマトも、ことの始終を見ていて耐え切れなかったらしい・・・。
その渦巻いた遣る瀬無さが押し出した舌打ちであろう。


―――俺は聞こえぬふりをした。



「ナルト・・・」



優しく声をかける。
打ち付けていた拳を片方の手で押さえつけ、それ以上皮膚に傷が付かないようにと留め置き、残りもう片方の手で、未だ震えを残すナルトの背を外套越しに撫ぜた。

―――何度も何度も。

ナルトが少しでも落ち着きを取り戻すように、自ら蒼の宝石をこちらに向けてくれるようにと、祈って。


「なっさけねぇってば・・・」


蹲ったまま、ナルトは唸るように呟いた。
背を撫でていた手が止まる。


「何が・・・里の英雄だ・・・。・・・・・・友一人、助けることもできねぇなんて・・・・・・んっとに・・・情けねぇよ・・・・・・カカシせんせー・・・・」


声は震えながら、搾り出すように続けられた。だが、最後に俺を呼ぶその語尾に、助けを求めるような苦渋が滲む。
俺はキツク双眸を閉じ、そうしてナルトに覆いかぶさるよう腕を回して、まだ俺より幾分が小さいその背を抱きしめた。



シン・・・と雪が降り積もる音が聞こえるかというくらい、その場に静寂が降りる。



ヤマトも微動だにせず、俺とナルトに視線を落とすこともせず、既に姿の見えなくなった一団の方向に視線を向けたまま、ただ静かに沈黙を選んでいた。














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