ここまでとは思わなかった。
カカシは正直、驚嘆していた。



胡坐をかいて精神集中するナルトに、どんどん自然エネルギーが蓄えられていくと、ナルトからは特別なオーラが発せられる。
瞼を閉じ、穏やかな面……その目元にまるで歌舞伎の隈取のような模様が現れ、ナルトの白い肌に化粧を施したようになる。




そしてナルトの瞳が開かれて……




「せんせ…御依頼の仙人モードだってば、これで満足?」




ふわりと立ちあがるナルトの所作すら変わったように思われる。
裾に燃える炎を象った上着は、色彩こそ違うものの、嘗ての師を彷彿とさせる。腰には大きな巻物が見られたが、その大きさも今のナルトの存在そのもののようにさえ感じられるほどだ。
それほど、仙人モードのナルトからは器の大きさも、可能性も、強さも、己が本当に小さく感じられるほど、只ならぬものが溢れ出ていた。
カカシはただただもう、言葉が発せられず、凍ったように先ほどの姿勢のまま窓辺に突っ立つしかなかった。
ナルトは、カカシから返事が得られないのが不満なのか、再び同じ質問を行う。



「なんか、驚いてるみてーだけど、これで満足だってば?」



「………あ、ああ」



やっとのことでカカシは言葉を返した。
だが、呆けたような表情をいつもの冷静なそれに戻すことは適わない。




「ああ、カカシ先生は初めて見るんだっけ…あ、そっか。それで仙人モードね…ああ、なるほど」




何もカカシから聞き出してもいないのに、ナルトは合点がいったように納得している。
それもそのはず、仙人モードのナルトは、通常より感覚が研ぎ澄まされていて、カカシが発する気全てをほぼ第六感のようなもので察することが出来るのだった。




「え…あ、わかっちゃった?…ん、や……ま、そう。まだお目に掛かってないからオレ……しっかり死んでたみたいだし、ハハ…」




表情を何とか変えて、動揺を必死に抑えようとするが、ナルトの前では垂れ流しのカカシだった。
『お前の成長を確認したいしね~ぇ。』なんて、わざとらしく付け足して言ってはみるが、とてもポーカーフェースなど保てはしない。
頭を掻く様子すら、滑稽であった。


ナルトが見透かしたように、そんなカカシにゆっくりと近づく。




「なぁ、センセ…何でそんなに動揺してんの?」

「おま…。それは……だって…ね…」



カカシらしからぬ、動揺。
それは仕方がないことだった。ナルトの姿は、カカシの想像の上を更に行き過ぎていたのだから。
自身へと距離を詰め、近づくナルトにカカシは益々動揺を深める。




―――その艶に魅せられる。





カカシは、手指の末端に震えすら感じていた。






―――ナニ…コレ。





見開かれた瞳は、とても不思議な様相で、以前のブルースカイとはまったく違う色見であった。その美しさは蕩けるような琥珀色。否、光を吸えば、閃くゴールド。
輝きは変わりはしない。強い意志の光を常同様に宿していたが、彩色が変わればこれほど印象も変わるものかとカカシは思う。
瞳を開けば、朱にも似た隈が、まるで遊女の紅にように目元を彩り、カカシの心臓を鷲掴みにする。
迫力さえ感じる美がナルトを覆う。思わず、歴戦の勇者が後づさりしてしまうほどに。
その美に、触れたいと思う気持ちはあるのに、まるでカカシのその手は動く事を忘れてしまったようだ。
欲しい物は、比較的簡単に手中に収めてきたというのに……ナルトに関してはいつも、思った以上の苦労を強いられている気がする。カカシはゴクリと生唾を飲み込み、そう思った。



「なぁっ…てば」


ナルトがカカシに手を伸ばす。
カカシは簡単にナルトの手に捕まった。
ナルトの手が触れた途端、ビリリと脳髄に電流が流れたかのような……常には無い感覚にカカシは酔う。
だが、あまりの刺激に、ナルトの手を振りほどきカカシは逃げたくなった。
勿論、今のナルトではカカシの俊足で逃げても無駄なのだが。




「すっげぇ、変だってば…カカシセンセ。何かビビってるみたい」

「う……っ…」

「先生が言ったんだってばよ。仙人モードになれって。なのに、何でそんな動揺してんの?」




カカシは言いたかった。


―――それは、それはね。ナルト。お前……ビックリするほど、綺麗になり過ぎ…。


しかし、そんな簡単な言葉すら出てこない。
ナルトの不思議な瞳に真っ向から見つめられ、カカシは彫像のように固まってしまったままだ。


「なぁ…、仙人モード見たかったんだろ?何か感想とかねーの?」


こんなに美しく、更に魅惑的になったというのに……言動は以前と変わりない。
とっても鈍感、天然のナルトのままだ。
その部分に幾らかカカシは落ち着いて、やっとナルトに話しかける事が出来た。



「おま……、ナルト、おまえ………そんな姿、皆に見せてたの……」


「ん?見せてたっていうか、ほら。戦闘してたからなぁ、何人かは見てるってばよ。でも誰が見たとかそんなの全然わかんねー」


「すごい……ナルト、マズイ。そんな目で見つめられたら……。」



その言葉の後、ナルトは何かに気付き、視線をカカシの下肢へと向ける。



「……………」
「……………」



ナルトがカカシの下肢の一部に目をやったまま、黙ってしまう。
二人の間に嫌ぁな沈黙が流れた。



「ナルト…これで察して……」


カカシは観念したかのように、視線を天井へとやった。居たたまれずに視線を逃がす。
ナルトの視線がカカシの顔へと戻されて…。



「ひょっとして………………センセ、俺に欲情してる?仙人モードの俺とセックスしてーの?」



ナルトのダイレクトな言葉にカカシは再びビクリと身体を強張らせた。視線をゆっくりとナルトへ向ける。
魅惑的な目元から発せられる眼差しが、股間に響くほど痛い。
カカシは、何と答えていいのか分からなかった。気持ちも体の反応も、無論イエスだが、それだけでは片付かないのだ。
今は、ナルトの美々しい姿に恥ずかしいほど興奮している。
下半身の己も、しっかり起立体勢に入っている。どうにかしてくれと叫んでいる。
コスプレなんて目じゃない勢いだが……、だが、しかし。恥ずかしくて、なかなか口には出せないままだ。




……………少し間を置いて、カカシは何やら言葉を考え。
諦めたように一つ、気持ちを落ち着ける溜息をつき。
無理の無い力で、ナルトに捕捉されていた片手を解いた。
そうして、再度腕を、今度は胸の高さでしっかりと合わせ、また真面目腐った顔で頭を下げる。



……ナルトに告げた言葉は。



「あの、許して貰えるなら………お願いします」




















その後、カカシの願いが叶ったのか、玉砕したのかは、また後のお話で。



















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