・・・蛍火の続き。本格的なチューに挑むカカシ先生;















□蛍火Ⅱ








「せんせ、大好きだってば…さっきの…もう一回して…?」


「一回と言わず何度でも…」



甘えてくるその身体を抱き締めて。
唇寄せて…。
愛しい子供の小さな唇に、己が唇を寄せて…


踊るように舞う蛍の中、闇夜の中。
ナルトとキス。
初めての、恋人の口付け。


最初はナルトが驚かないように、先ほどと同じく触れるだけ。
優しく、やさしーく…。
熱を持った唇を重ねれば、俺の鼓動はビクンと跳ねる。
俺は出来るだけ平静を装うのだが…。
オスの本能による衝動はどうにも誤魔化しきれないようだ。
早まってゆく鼓動のスピードを制御しきれない。
触れ合えば悟られてしまいそう。


――あぁ、何やってんだろ…余裕のないとこ、ナルトにバレてしまうっていうのに…。


だが、よくよく考えれば。
余裕がないのは目の前の子供も同じで―――
ナルトも、「…して。」という割にはドキドキのよう…
俺の肩口を掴んでいる手が小刻みに震えていた。


―――こんな様子じゃあ、こっちの状態までは気が回らないでしょ。


そう思えば自然、大胆になる。そんな自分に胸の中で苦笑する。
そっとナルトの背を抱いた掌に力を入れて。ナルトをこの腕の檻の中から出られないようにしてから…
合わせた唇から息を吐きざま、己の舌先をナルトの薄く熱い皮膚に這わせた。
ナルトの目が驚き見開かれるのも承知の上の事。
クスッと笑みをのせた瞳で、ナルトの蒼い双眸を捕らえれば、尖らせた舌先を、思いのまま抵抗の無いナルトの口腔内へと押し入れる。


ビクつくナルトの身体、当然だろうね。
こんなキス他の誰ともしたことないでしょ…!?
サスケとのキスだって、事故の産物。ただ身体の一部同志が偶然触れ合ったに過ぎない。
これが本当のキスっていうものだよ。今までのものはキスとはいえない。今までのは、ただの…そう、スキンシップさ。
だから、今夜がナルトのファーストキス喪失。少なくとも俺はそう思いたいね。


「ん…っ!」


くぐもって漏れる声に、高鳴る胸を尚も震わせる。
そして、もっともっと貪りたくなる衝動を、上忍の理性と忍耐総動員で押さえつけて。
優しく、だが強引に舌先をナルトの口腔内で遊ばせる。
びっくりして縮こまったナルトの舌を、己の舌先で追い詰めて捕らえ。
くすぐるように触れ合わせて、ナルトが慣れれば引き潮のように逃げて。


「腰が引けてるよ。ナルトから「して」って言ったのに。」


クスクスとからかうように笑いを零し、ナルトの負けず嫌いを煽ってから再度唇を合わす。
無言で睨んできた赤面の可愛い子は、今度は自分から舌先を差し出してきて…


―――まったく、単純。
思い通りにいき過ぎて、噴出してしまいそうだよナルト…。


その甘い舌を軽く吸い上げてやると、ぶるっとナルトの背が震えたのを、背に回した腕で感じた。
ナルトの甘い唾液が堪らなくて、下半身の疼きを感じながらも必死に堪える。
簡単に押し倒してしまうわけにはいかない。
今夜はキスだけだと己に何度も何度も言い聞かせ、口付けの最中でナルトの上がる声を聴けば、またぐらつく理性。


――いっそ、このまま…甘いお前を全部食べてしまいたいよ…。


己の中の狼が身体の中で吼えて、檻から出せ。と啼き喚く。
深い口付けに慣れてきたナルト。それをいい事に、俺は先ほどより貪りを激しくしていった。
せめて、せめて…キスだけなのだから…
胸の中で必死に言い訳をして、ナルトの喉奥まで犯すように舌を潜り込ませる。


「ん、んんっ…」


苦しそうなナルトの声が心地いい。己の性癖が嫌になるが…こんな苦しそうなナルトの声にも、ぐっとキてしまう。
ナルトの口腔で、大人しくなってしまった小さな舌に己の舌を巻きつけて、ざらつく表面を擦り合わせ、その感触を楽しみ。
小さく並ぶ歯列、その一本一本を確かめるように舌先を滑らせて溢れる蜜を吸い…


「あぁ…ナルト……」

「ふ・・・ァ…」


充分にナルトの小さな口腔を味わった後、名残惜しげにその唇を開放する。
夜の闇、唇と唇の間、蜘蛛の巣のような銀の糸が引いた。
ナルトの小さな口の端には、処理しきれなかった唾液の筋が尖った顎先まで流れを作り。
指先でツイと拭って己の唇へと塗りつけて。


「可愛いねぇ、ナルト…。飲みきれなかったんだね。」

「―――っ・・・な、何…言うってばよ・・・っ!」


ニッコリ最高の笑みを浮べて言ったのに、ナルトはボンと顔を火のように火照らせてしまって、俺から目を逸らした。
強がった口調。
フフ…まったく可愛いね。キスの所為で、すっかり足元フラフラのくせに・・・
ナルトは顔を逸らしたまま、先ほどまで熱く繋がっていた唇を、まるで余韻をふき取るみたいにゴシゴシと服の袖口で拭う。
その様子に、可愛いを飛び越えて少しカッチンと来た。


「ちょっと…何拭いてるの…」


思わず声が低くなり、後ろに後ずさるナルトの腕を強く掴む。
逃がしやしないよ。
折角こういう仲になれたんでしょ。
そういう仕種も可愛いけど、もう少し甘い展開を俺は期待しているんだ。
こんなキスくらいで怯えてもらっちゃ、この先が思いやられるよ。


「・・・・・・だっ・・・て・・・」

「だってもクソもないデショ。……さっきまで、お口の中で舌と舌を絡ませてたんだよ?!」

「うっわ~~~~!言わないでってば…恥ずかしい~~~っ!!」


―――絶叫するなよ。そこまで照れられたら、こっちが恥ずかしいって…


「――――――良くなかったの・・・?」


ナルトの腕をぐっと間近まで引いてから、ナルトの恥ずかしさのあまり涙目になった蒼い瞳を見つめ。俺は少しばかり寂しそうに言ってみた。
眉を潜めて、いかにも悲しそうに…。
もちろん作戦だけど。
こんな見え見えの作戦でも、可愛いくて素直なこの子はノッてくる。
人に沢山傷つけられてる分、人が傷付くの見るの苦手だもんね、ナルト。
お前は、そんな優しい子だって…せんせー知ってるし、愛(ナルトゲット)の為
なら利用もするよ。


「…あ。」


小さく声を漏らして、口ごもる。
次の言葉を捜しているね。どうしたら俺に伝えられるか・・・悲しい思いをさせずに済むか。
今、すっごく考えてるのが分かるよ。ごめーんね、分かってるけど…それでも止めて上げられない。


「せんせーとのキス、嫌だった?」


ゆるりと指先でナルトの頬をなぞる。
ナルトは俺の言葉と指先の感触に、ビクリと背を正してこちらを見た。


「ねぇ、嫌だった…?」


―――ごめーんね、答え分かってるんだけどね。
追詰めてしまう俺を許して…ナルト。
ちゃんと言葉で、俺に伝えて・・・。


「・・・・・・・・・嫌じゃ・・・・・・無い・・・・・・ってばよ・・・また、せんせと・・・キス・・・・・・したい・・・ってば・・・」


少しの間を置いて――
どもりどもり、やっと言った。
そして照れを隠すようにガバリと俺に抱きついてくる。
そんなナルトの背をポンポンと叩いてやる俺の顔は、きっとどうしようもないようなニヘラ顔だろう。
よしよしと小さな面積の背を撫でてやる。


――よく言えました。大ごーかく、だよナルト…。


顔を俺の胸にこすり付けてくるナルトが愛し過ぎて、また檻の中の狼が暴れだしそう。


「じゃあ、そんなに恥ずかしがらないでよ・・・。これからは、当たり前みたいに今のキスをするんだから。」

「うっ……」


ナルトの身体が、俺の言葉を聞いて強張る。
まったく…お子様だからねぇ。
仕方ないと分かってるんだけど、そんな所も好きなんだな…。
今まで相手したどんな人間よりも初々しくて、キレイ。


苛められすぎて…
傷つけられすぎて…
苦しみすぎて…

―――綺麗。


綺麗な子。



先生も…そう、あの四代目も―――
強くて、凛としていて・・・・ホント綺麗だったなぁ。
でもね。
ナルトの綺麗とはちょっと違うかな…。
惹かれ所が違うのかな…別に俺はショタコンなつもりないけどさ。


こんな小さな身体で、痛々しいほど頬笑みも笑顔も元気も絶やさない。
そんなナルトの綺麗に一番惹かれてしまったみたい。


小さく鼻で笑い、苦笑して…
抱きついてくるナルトを殊の外慎重に抱き止めてやり―――


「ね、嫌じゃないならさ・・・ナルトからキスしてくれない?」


ナルトの背を落ち着くようにと撫でながら、キスを強請ればビクリと震える子供。
漸く顔を上げて、俺を見て・・・絶句してるの?
強張った頬、動かないねぇ。
さあ、どうするのかな…ナルト。


「服の袖で唇拭ったりしてさ…せんせーの事汚いとか思ってるんじゃないの?――だから出来ないんデショ」

「・・・ンなっ・・・!そんな事思ってないってば…せんせ、汚いなんて………汚いのは寧ろ俺だってば・・・!」


悪いせんせーは確信犯。
こういう言い方すると、ナルトが凄く堪える事なんてすっかりお見通し。
少しばかりの意地悪も、ナルト大好き故だから全然平気だよね。
許されるでしょ。
さあ…何が何でもナルトからキスして貰うよ。
それ以上の事は我慢するんだから、それくらいいいでしょ。


ガンとして譲らない姿勢でナルトを見つめ続ける。
とうとう観念したらしいナルトは、のっそりと身体を動かして俺の頬に手を添えて・・・
ああ、可愛い手だねぇ。
その指の先に視線を遣って、俺はナルトからのキスを静かに待つ。
ナルトの顔がゆっくりとスローモーションの動きで近づいて・・・

本当に。

本当に――。

チュッと音を立てて、やっとこ皮と皮、触れるだけの接吻。


「したってば・・・!」


胸を張って妙に誇らしげなナルト。
でも、俺は至って正直者で・・・
もう少し言葉を選んでも良かったが、あまりと言えばあまりなキスに、何処かで拍子抜けしたんだろうなぁ。
うっかり本心が口に出た。



「詐欺みたいなキスだね・・・」

「・・・・・・・・・ッ!」



元から大きい目が更に大きく見開かれて。



ま、いいか。
最初はこんなもんでしょ。
本日のメインは蛍だったわけだし・・・
それが告白に漕ぎ着けて、ディープなキス。
ま、大進展。大躍進。



「さっき、恋人のキスを教えてあげたデショ」


もう一回実践ね。と、凄味のある笑みを浮かべナルトの後頭部に手を添えてキスしようと引寄せたら…
ふんわり飛んでた蛍が、ナルトの唇にタイミングよく止まって…


チッ、悪戯な蛍に先を越された、っていうか・・・・・・邪魔された。



―――せんせぇ・・・・・・キスくらいいいじゃない。やっぱり見てたでしょ・・・


思わず胸の中で、かの師に毒づいた俺に罪は無いはずだ。



今度は自分の部屋にでも連れ込んで、誰にも邪魔をさせず、ナルトを思う存分貪ろう。

俺に向けて伸ばされる小さい手に己の手を重ね、静かに家路に向かう帰り道。

雲から顔を覗かせたお月様を仰いで、そう心に誓った俺だった。

















by 千之介

本格的なキスがここにきてやっと・・・。
さて、最後まで出来るのはいつ??!!
おっちらへっちらカカシ先生とナルトの恋愛を進めていきたいです(笑)

拙い文ではございますが、楽しんで頂けたなら幸いです。
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